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Meister interview vol.4 〜 鈴木理也さん 〜

革靴、皮革製品や靴磨きなど、足元のお仕事に携わっている方はもちろん、
ファッションや皮革に精通しているプロフェッショナルな方々を、
M.MOWBRAY シューケアマイスターがインタビューし、ご紹介する企画です。

今回は、ブーツ好きには堪らないこちらの方。
レッド・ウィング・ジャパン(株)の元代表取締役であり、
現在はブーツブランド Ol’ Shanks(オルシャンクス)の監修を務める、鈴木理也さんにお話を伺いました。


Q(マイスター 以下:マ). 現在の職業に就いた経緯、その内容について教えてください。

鈴木さん

レッド・ウィング・ジャパン(株)の代表取締役を一昨年に退いてフリーランスで活動を始めて2年近くになります。
レッドウィングジャパンで約14年間、日本のブーツ市場を見てきましたが、
その間に多くのつくり手がこだわり度合いの高いブーツを世に出し、日本はブーツ好きにとっては世界で最も素晴らしい市場になりました。
ブーツ以外の革靴においても、従来の欧米追従型を脱して日本らしさを持つ靴が評価される土壌が生まれつつあります。

そうした中で、海外ブランドを日本で販売するよりも、
日本のつくり手の側に立ちたいと思うようになり、独立することにしました。

現在では、奈良の靴組合のお手伝いをしながら、
少量を受注生産する自分のブランドのブーツの販売や、
Youtube「ブーツのミカタ」チャンネルでの発信などをしています。

マイスター

ありがとうございます。
現在は日本のモノづくりを中心に活動されているんですね。

約14年間、日本のブーツ市場を見てきた鈴木さんの視点から、
日本人が作るブーツやブーツ以外の革靴を見たときに、
どのような点(ディティールやブランド背景など)に対して日本らしさを感じることがありますか?

鈴木さん

日本のメンズカジュアルファッション市場は、
クラシックなものやビンテージに精通し、それらから大きな影響を受けています。
日本のブーツのつくり手も同様です。

現代的な量産体制が確立する中で工程が簡略化される前の、
古い時代のつくり方やディテールを受け継いでいるものも多く見られます。
レッド・ウィングのような生産効率を高めた量産タイプのブランドがもうやらなくなった、
時間をかけて手作業で行う工程もかなり残されています。

小規模なつくり手が多く、分業も発達しているので、
それをやり易い背景があるんですね。

素材も多様です。
少量生産のものが多いので量産に向かない革も使えますし、
手作業が多いので扱いにくい革も使えます。
ブーツには、ホースバット、タンニンなめし革、なども多く使われています。

長年ブーツを愛用しているユーザーも多く、
こだわった製品へのニーズも高いので、
こうした製品もどんどん増えてきて、
ことブーツに関しては、他のどの国よりも幅広い、奥の深い、市場になっていると思います。

マイスター

確かに、靴磨きに使用するブラシや着ている洋服など、
我々の身の回りの生活には靴以外にも様々な日本の職人さんに作られた道具が沢山ありますね。

小規模なつくり手が多く、手作業を多用して製造をするのに向いているという日本の状況も合点が行きます。

Q(マ). お仕事の一番のやり甲斐、魅力について教えてください。

鈴木さん

日本の革靴やブーツのつくり手と共に、
海外を模倣するのではなく日本ならでは発想でものづくりをする機会や、
自分自身のこだわりを込めた製品を販売する機会に恵まれています。

マス市場ではなく、独自の感性を持ってこだわり度合いの高いものづくりや提案をする人々とも交流でき、刺激を受けています。

Q(マ). 現在のお仕事をやるにあたり、ターニングポイントのようなものがあれば教えてください。

鈴木さん

いくつかの業種ではありましたが、常に欧米の企業で働き、
それらの国の文化的な背景からつくられた長い歴史を持つブランドやプロダクトのマーケティングや販売をしてきました。

欧米の関係者が日本に来て日本の市場を案内することもよくありましたが、
レッド・ウィング時代に多くの海外の顧客がバイイングのために日本に来て、
日本のブランドや製品を目の色を変えて探すのを見て、次第に日本から海外への発信したくなりました。

マイスター

日本製のクオリティは、当時から世界中の注目を集めていたんですね。

Q(マ). 好きな靴や革小物のブランド、思い入れのある一足などがあれば、教えてください。

 

鈴木さん

自分が企画に携わった製品の中から敢えて挙げるとすると、
「ベックマン・フラットボックス」でしょうか。
人知れず存在していた先芯(※1)のない革靴が、認知・理解されるのに大きな役割を果たしていると思うので。

個人的に好きなブランドは「CLINCH (クリンチ)」です。
クラシックな雰囲気、タイトなラスト、など、履いていて大きな満足感を感じます。

鈴木理也さんご自身で履き込んでいるという3足。

1. ベックマン フラットボックス(写真1枚目)
茶芯のブラックのもの(品番 9060)とティークフェザーストーンというレザーのもの(品番 9063) の2足。
どちらも2017年に発売したものなので3年半ほど所有しているそうです。

2. CLINCH ジョージブーツ(写真2枚目)
鈴木さんが5年ほど前に入手したもので、CNラストというクリンチの細い木型が足にぴったりフィットするそうです。
ビンテージブラックという染料で染めたラティゴレザーが少しずつ色が抜けて緑っぽくなり、
それがまた茶色に変化するという面白い経年変化をする、これは黒が少し抜けて緑が出てきたところとのこと。

マイスター

ベックマン・フラットボックスは先日、FANS.浅草でもカスタムにお出し頂いてましたよね(カスタムに関する記事はコチラ)。
様々なブーツシーンを牽引してきた鈴木さんから見た、先芯の無い革靴の魅力は、どのようなところに詰まっていますか?

鈴木さん

ほんの10年前までは、グッドイヤー製法のようなカチッとした製法の伝統的革靴には必ず先芯が入っていなければならない、と誰もが思っていました。
1950年代やそれ以降の革履のほとんどに先芯が入っていたからです。「先芯が無い」という選択肢がなかったわけです。

しかし、それよりも古い時代の、シンプルに(おそらく低価格で販売するために)つくられた先芯の無いワークブーツを履いてみると、
つま先の革も馴染み、底もつま先まで反り、足馴染みは抜群でした。

特に私の様に足が細いと、つま先まで足が入ってしまうために、
つま先部分の馴染みが履き心地にも大きな影響を与えるのだと思います。
つま先まで革にシワが入ることによるエイジングの面白さも魅力です。

先芯があった方が良いという方も、
もちろん大勢いらっしゃるはずで、どちらが良いという物ではありませんが、
「先芯が無い」という選択肢が無いのは残念すぎる、という考えてベックマン・フラットボックスを企画しました。

マイスター

見た目だけでなく、履き心地の良さも先芯の無い靴の魅力なんですね。
常識だった先芯が入った状態から、
「先芯が無い」面白さが世の中に浸透したときは革靴のひとつ歴史が変わった瞬間と言っても過言ではないかもしれません。

ブーツといえばとにかくタフ。
ガシガシと履いても、お手入れを欠かさなければ何年も履ける一生物のイメージがありますが、
鈴木さん自身がブーツや革靴を長く履いていく上で、行っているメンテナンス方法やそのこだわりなどがあればお聞かせください。

鈴木さん

ブーツにもよりますが、一番気を遣っている事は保管の際の通気性、温度湿度です。
とは言っても特別な事ではなく、高温多湿の通気性の悪い場所に長い間置きっぱなしにしない、という事です。
梅雨の期間などは除湿機で靴棚のあたりの湿度を下げたり、
箱に入れていあるものは年に一度くらいは日干しをします。カビを寄せ付けない、という事です。

同じ意味で、最初からオイルがタップリ入っている革はオイルが抜けてくるまでミンクオイルのような粘性の高いオイル製品は使いません。
艶を出したい場合はシュークリームを使う事が多いです。

革にオイル分を入れたい場合は、今は、最近発売されたSADDLEUPのレザーミルクを使っています。
さらっとして伸びが良く、少量を薄く伸ばして適量のオイルを手早く塗り込めるので、とても気に入っています。

Q(マ). 現在のマイブームなどがあれば、教えてください。

鈴木さん

マイブーム、とは少し違いますが、革に関しては、型押しでない自然なシボや色ムラ、
また、通常嫌われるトラ(※2)やバラキズ(※3)を美しく表現しているものに、今までにない興味を覚えるようになりました。

今までダメとされていた、そういう天然の革ならではの個性に価値を与えている製品はまだ少ないですが、
少しずつ出てきているようで、注目していますし、自分でもそうした製品に関わりたいと思っています。

マイスター

不良として避けられがちな、トラやバラキズを敢えて残す、活かすのは皮革ならではの新しい視点かもしれません。
今まで日の目を浴びることがすくなかった皮革達が活かされる製品は、
お手入れのしがいや経年変化後の魅力もありそうで、とても興味が湧きます。今後も目が離せませんね。

※1 先芯:革靴のつま先部分のに入っている芯材。靴のつま先の型崩れを防ぎ、足を保護する役割を持つ。
※2 トラ:皮革に見られる直線上のシワや色ムラのこと。
※3 バラキズ:虫刺されやひっかかれた痕など、原皮に残った傷跡のこと。


インタビューは以上です、かなり濃密な内容となりました。
お忙しい中インタビューにご協力いただいた鈴木さん、ありがとうございました。

「ブーツを履きたくなってきた」
「鈴木さんの手掛ける製品に興味が湧いてきた」

という方は、下記のYouTubeチャンネルやInstagramより、さらにブーツの世界を辿ることができます。
ぜひご覧ください。

次回もお楽しみに。

Youtube「ブーツのミカタ」チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC3Y9pa_nPqbiyanEFqU_XXA
Instagram@michiya186/@ol.shanks.boots


「シューケアマイスター」は (株)R&Dの登録商標です。