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Meister interview vol.15 〜 shoëhorn 橋爪勝さん 〜

革靴、皮革製品や靴磨きなど、足元のお仕事に携わっている方はもちろん、
ファッションや皮革に精通しているプロフェッショナルな方々を、
M.MOWBRAY シューケアマイスターがインタビューし、ご紹介する企画です。

靴づくりから販売、修理まで、様々なプロフェッショナルが存在する靴業界は、
「靴」以外の異業種を経験してこの業界にやってきたという方も多いです。

我々シューケアマイスターにも革靴とは異なるジャンル出身のスタッフがいます。

今回は、靴以外の業界にも携わった経験があるという、
野方にて靴修理店 shoëhorn(シューホーン)を営んでいる橋爪勝さんにお話を伺いました。

 


Q(マイスター 以下:マ). 現在の靴修理に関するお仕事を始めるにあたり、ターニングポイントのようなものがあれば教えてください。

橋爪さん

前会社が地方に移転になる事が決まり、これからの自分の人生を真剣に考える事になりました。
安定と挑戦という答えが出た時に、後者を選び独立に至りました。

マイスター

そうだったんですね。
靴修理業を始めるまでは、お仕事ではどんなことをされていたんですか?

橋爪さん

この仕事につく前はオートバイの修理や管楽器の製造などをしていたのですが、
いつかなにかの形で独立をしたいと考えていたときにご縁で師匠と出会いました。

そこでリペアの楽しさを知り、この仕事だと思い、独立を前提に弟子入り。
技術を習得して現在に至りました。

マイスター

独立をする以前にも、バイクの修理に楽器の製造と、
ものづくりに携わる様々な経験をされてきたんですね。

バイク修理や楽器製造での経験が、
現在のお仕事に活きたと感じた瞬間などはありますか?

橋爪さん

オートバイの修理では、
綺麗に分解して組み立てることが役に立っていると思います。

一方で、管楽器の製造では、
1枚の真鍮を叩いたり、削ったり、磨いたり、塗装したりと、
手作業で進める工程が多かったので、
そういった技術は靴修理にかなり似ているかと思います。

管楽器を磨く機械は、
靴修理で使うフィニッシャー(※1)と構造がほぼ同じなので、
抵抗なく扱えましたね。

マイスター

管楽器と靴修理、異なるジャンルでも似た機械を使うというのは驚きですね。

橋爪さんが数多の靴の修理を行う上で苦労した、
現在も苦労していることなどはありますか?

橋爪さん

修理をしていて難しいと思うのは、人それぞれの価値観ですかね。

まったく同じお靴が来たとしても、直し方は人によって異なります。
コストを抑えたい方、買った当時に近づけられるように同じ仕様で修理を希望する方、
見た目を気にせずとにかく履けるようになるのを希望する方、などさまざま。

僕が思う100点の修理は、お客様の100点ではないので、
お客様の求めていることに対して持っている技術を提供する。
これがこの仕事の大事なところだと思っています。

マイスター

我々が行っている靴磨きでも、
お客様によって仕上げ方の希望に差が出るのはよくあることですね。

挑戦の道から始まった橋爪さんの現在のお仕事は、
どんな瞬間にやりがいや魅力を感じることがありますか?

橋爪さん

物には人それぞれの思い出があって、
それを僕たちの技術で手助けできる素敵な仕事だと思います。
もちろん修理のセオリーはありますが、それだけではおさまらない人それぞれの価値観があるんですよね。

値段の高い靴 = 良い靴 ではなく、
気に入っている靴 = 良い靴なんだと思います。
これは今までの仕事では経験のないことで、日々勉強中です。

Q(マ). 休日の過ごし方について、教えてください。

橋爪さん

バイクのレストア(※2)とレコード鑑賞をしています。

マイスター

バイク修理や、管楽器の製造など、橋爪さんが前に就いていたという職業の影響も垣間見えますね。
レコードは素人の私からしたらかなり奥が深そうな世界ですが、橋爪さんはレコードの収集などもされていますか?

橋爪さん

収集はしていませんし、マニアでも無いです(笑)
単純にレコードで聴くのが好きなだけです。

マイスター

たまにレコードを流してくれる喫茶店などにいきますが、音色に独特の魅力がありますよね。
橋爪さんがお持ちのレコードの中で、何か特別に思い入れのあるレコード盤などはありますか?

橋爪さん

2つほどありまして、1つ目は、The Clashの『London Calling』ですね。
ジャケットもさることながら、音楽に対して固定観念の強かった僕を解き放してくれたアルバムで、
これは10年後も聴いていると思います。

2つ目が、The Poguesの『If I Should Fallfrom Grace with God』で、
これは聴くとなんだか気分が上がる、僕にとって魔法のアルバムなんです。
4曲目に収録されている『Fairytale Of New York』は、今でもクリスマスの英国で一番流れている名曲。
うちのお店もクリスマスはこの曲です。

橋爪さんの所有しているレコード。

1. The Clash 『London Calling』(画像1枚目)
2. The Pogues 『If I Should Fallfrom Grace with God』(画像右)

Q(マ). 好きな靴や革小物のブランド、思い入れのある一足などがあれば、教えてください。

橋爪さん

一緒に歳を重ねていけるものが好きです。

マイスター

履き馴染んだ靴は、何年も使い続けると愛着が湧きますよね。
一緒に歳を重ねるという点で、実際に橋爪さんが長く使っている、特別思い入れのある革靴はありますか?

橋爪さん

2足、思い入れの深い靴があります。

1足目が、 Alden longwing blucher wing tips で、
独立する前、これから一緒にあらたな第一歩を踏む靴を。
と、ニューヨークのオールデンショップで購入しました。

汚いスニーカーを履いて買いに行ったら、
冷やかしと間違えられてしばらく相手にされなかったのも良い思い出です。
履けば履くほど馴染む靴で、今が最高のフィット感です。

2足目は、Tricker’s M5634 stow acorn antique です。
初めて見たのは吉祥寺の古着屋、当時二十歳ぐらいでしたね。
欲しい気持ちはありましたが、高くて手が出せませんでした。
いつか自分へのご褒美をあげるときが来たら、これを買おうと心に決めたのを覚えてます。

それから10年ぐらい経って、会社で良い評価をしてもらえることがありました。
自分でも良くやったと思えるぐらい。

そんなとき、「あっ!今だ!あれを買おう!」って思い出して買ったのを覚えてます。
もう20年前の話です。

橋爪さんが実際に履いている2足の靴。

1. Alden longwing blucher wing tips(画像1枚目)
2. Tricker’s M5634 stow acorn antique(画像2枚目)

マイスター

聞いていてこちらがワクワクしてしまうような、夢の詰まったとても素敵なエピソードですね。
写真を見せていただくと、どちらもかなり綺麗にお履きですが、
特別思い入れのある2足のメンテナンスやお手入れ方法、使用するケアアイテムのこだわりなどはありますか?

橋爪さん

オールデンの方は、つま先の減り防止にトライアンフスチールを装着しています。
アッパーのメンテナンスはワイヤーブラシとM.MOWBRAYのスエードカラーフレッシュのみで、
補色は一度もしていません。

トリッカーズは、ハーフラバーを貼ってゴムソール仕様にしています。
「男は黙ってレザーソール」なんて思ってましたが、小雨の降る新宿モザイク通りの坂を登れなくて…(笑)
すぐにハーフラバーを装着しちゃいました。

アッパーの退色も楽しみたいので、メンテナンスではあえて補色をせずに、
M.MOWBRAYのデリケートクリーム と、
ENGLISH GUILDのBees Rich Creamのニュートラルを使用しています。
ビーズリッチクリームは、乳化性クリームなのにしっかりと輝いてくれるので、素晴らしいと思います。

ただの自己満足かもしれませんが、
英国靴には英国のクリームを使うというのもこだわりの一つです。

マイスター

アッパーの退色を楽しむというのは、デニムなんかとも通ずる部分がありますね。
無色のクリームのみで磨いた靴は独特の透明感もまとうように感じます。

今回はお忙しい中ありがとうございました。

※1 フィニッシャー:靴修理で使用する、かかとやつま先に貼り付けたパーツなどを削って整える仕上げ用の機械。
※2 レストア:エンジンのメンテナンスや塗装を施すこと。


インタビュー内容は以上となります。
お仕事やご自身の靴の思い出だけでなく、幅広いジャンルの楽しいお話を伺うことができました。
橋爪さん、今回はお忙しい中ありがとうございました。

バイクやレコードなど、
様々な業界でのモノづくりを経験し、
レコードの世界にも通じている橋爪さんが営んでいるお店の情報は下記よりご覧いただけます。

次回もお楽しみに。

shoëhorn

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