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Meister interview vol.28 前編 〜 ASHIDO HOKKAIDO 佐藤我久さん〜

革靴、皮革製品、靴磨きやファッションなどに精通しているプロフェッショナルな方々を、
M.MOWBRAY認定のシューケアマイスターがインタビュー。

お仕事の内容、こだわりや人となりについてご紹介する企画です。

インタビューにご協力してくださったのは、靴磨き職人の佐藤我久(さとう がく)さん。
全2回に渡り、お店、靴磨きや靴修理に関する様々なお話を伺いました。

今回の前編では、愛知県名古屋市で靴磨き靴修理専門店「GAKUPLUS」(ガクプラス)を運営後、北海道札幌市で靴修理・靴磨き・オーダー靴専門店「ASHIDO HOKKAIDO」(アシドウ ホッカイドウ)を運営する決意をした、直近の約1年間にまつわるお話を。

後編では、北海道で多く履かれているというワークブーツに関して、
ブーツが履かれる理由、靴クリーム、ケアやお手入れにまつわるお話を。

それぞれお届けいたします。

ASHIDO HOKKAIDO|佐藤我久

北海道帯広市生まれ。

18歳までを十勝・帯広市で過ごし、その後、愛知県の大学へ進学。
2年間の靴販売店アルバイトを経て、20歳から路上での靴磨きを開始。
その後、大学在学中に自身が店主を務める靴磨き靴修理専門店「GAKUPLUS」を立ち上げる。

約6年間の運営を経た際、故郷である北海道での再スタートを決意。

「北海道の ” 足 ” 元から世界を支える ” 道 ” を作る」=「足道北海道」
というメッセージを込め、新店舗「ASHIDO HOKKAIDO」を札幌市でスタートした。

過酷な環境にも対応した ” ラバーソール ” を、
1人1人の靴や生活スタイルに合わせて提案する店舗コンセプトが評価を集め、
現在では北海道の内外を問わず多数の相談が寄せられている。

佐藤さんの生い立ち、これまでの軌跡は、

ASHIDO HOKKAIDO 公式Instagram
→ ハイライト
→「誕生秘話」


よりご覧いただけます。
あわせて、チェックしてみてください。



|千歳空港に着いて気がついた ” 違い ”

名古屋市で、20歳から約8年間靴に携わる仕事をしてきました。

ビジネスマンが多い街だったので、持ち込まれるのは主にドレスシューズで。当時運営していた「GAKUPLUS」でも、これらの靴に合うような、「靴を綺麗に、華やかさを持たせるための靴磨きや靴修理」をメインで提供してきたんです。具体的に言えば “ ハイシャイン(鏡面磨き) ” や、レザーソールの補強、レザーでのオールソールなどです。

その後、名古屋の空港を出て、千歳空港に到着してすぐに、

「本州(名古屋市)と北海道では、履かれている靴がまったく違う」

ことに気がつきました。

18歳まで北海道に住んでいた頃は気にしていなかったことでも、本州での経験を積み、名古屋のビジネスマンの足元を見てきたからこそでしたね。

|今までの方法だけでは通用しない世界

年間の半分以上、雪で路面が濡れていることが前提の北海道では、本州でよく履かれていたドレスシューズを履いている方はとても少なくて…。代わりに履かれていたのは、レザーではなくラバーソールの靴底のもの、長靴やワークブーツばかりでした。

そんな、本州との足元の違いに気がついたときに、

「名古屋でやっていた靴磨きだけでは、多くの人を感動させることはできないかもしれない」
「国が変わったつもりで、今までとは違う切り口でやっていかないと」

と思い、北海道で暮らしている方々の足元をずっと見続けました。

そして、本州での経験も活かしながら、北海道の多くの人の足元を支えるために、自分に何ができるか、今までにない新しい提案ができないか、ずっと考えていたんです。

2021年の2月末に名古屋のお店を卒業したんですが、その前後も含めて約半年ほど頭を悩ませました。そして気がついたんです、 “ ラバーソールの凄さに ” 。

|これだと革新したのは “ タイヤ交換専門店 ” ?

今取り扱っているラバーソールに特化したお店にしようと確信したのは、ある ” タイヤ交換専門店 ” での出会いでした。

休日に、北海道の雪道に対応しているタイヤを探しにいったときのことです。

正直なところ「最低限の機能がある物で良いかな」と思いながら売り場に行くと、品揃えの8割くらいが雪に対応しているスタッドレスタイヤだったんです。雪用のタイヤがこれだけ豊富なことにも驚きましたし、ずらっと並んだタイヤの迫力も印象的でした。雪国北海道ならではの需要が、これほどまでにあることも分かりました。

思わず違いが気になり、店員のお兄さんに声をかけると、メーカーやモデルごと、事細かな違いまで話してくれて、それまで触れたことのないタイヤ本体にも、たくさん触らせてもらえたんです。

そのときに「はじめに検討していたものより、良いタイヤを試してみたい」と心が動きました。そして、そのときの体験自体に、すごく “ 感動 ” したんです。

あのタイヤ交換専門店のお兄さんの姿が「ASHIDO HOKKAIDO」の接客スタイルを確立させてくれました。

|北海道の足元にラバーソールで “ 感動 ” を

タイヤ屋さんで得た “ 感動 ” を北海道の足元にも取り入れたいと感じました。

というのも、日本で最も足元環境が過酷な北海道で、多くの方が靴に求めるのは「機能面」です。滑りづらい、雪や水を弾くなど、もちろん機能は重要ですが、それだけだと「道具感」のようなイメージがついてしまいます。

靴は毎日のように使い、生活を支えるアイテムのひとつです。名古屋では、そんな靴が目の前で輝いたり、それを通じて “ 感動 ” していただけるような体験を提供してきました。

日本の中で最も足元環境が過酷な地元北海道で、より多くの人を足元から感動させ、日々の生活を支えたいと思い、考え抜いた末にたどり着いたのが「ラバーソール交換専門店」を開くことでした。

何万足も革靴を磨いてきたからこそ、 “ 足元 ” を支える上で最も大切なのは “ アッパー(甲革) ” ではなく、 “ 足の元 ” である “ 靴底(ソール) ” なんだと、この街を見て気が付かされたんです。

僕が行ったタイヤ交換専門店さんのように、ラバーソールを、お客様自らが見て、触れて、知って、選ぶことにワクワクできる。それに加えて靴磨きやクリーニングも安心して任せられる。雪や雨などの悪天候への対策をして、北海道の人々の生活を足元から支える。

これらを叶えられる “ ラバーソール ” を専門的に取り扱うお店を作ることに決めたんです。

|ラバーソールについてを学ぶにあたって

ラバーソール交換店を立ち上げるにあたり、ソールのことについて一から学び直す必要がありました。そこで力になってくださったのが、靴資材や靴修理機材の卸をされている大阪の会社「株式会社 昴」(すばる)の営業担当である外園さんです。

お店が完成する前に北海道まで直接来てもらい、ラバーソールや靴修理に関する様々なことを教えていただきました。外園さんは、靴修理における真のスーパーコンサルタントだと思います。

直接来てもらったおかげで、リモートでは中々分からないような、ソールごとの特長や違い、接着剤とラバーとの相性、難易度の高い修理や、なかなか聞く機会のない「Vibram社」本国の情報など、たくさんのことを教えてもらいました。

|資材を扱うプロから教わること

浅草の「山田株式会社」さん、横浜の「マテリアルボックス」さん、札幌の「麻生商店」さんなど、「昴」さん以外にも、さまざまな靴資材の取扱店さんにお世話になっています(2022年2月現在)。

どの会社さんも「うち(の会社)はこのソールが優れていると思う」という部材を提供してくださって。今もゴム配合やソールのパターンなど、いろんなことを教えてもらっているので、本当に資材屋さんには、特に感謝していますね。

|北海道の生活を支える足元を作る、靴修理職人の存在

こうして “ ラバーソール ” を専門で取り扱うにあたり、雪国北海道で、靴修理の経験を持つ職人を探そうと考えたんです。その矢先、すぐに手を挙げてくれたのが、靴修理職人の北村航くんでした。

航くんとは、彼が20歳の頃に名古屋時代に「GAKUPLUS」で出会いました。当時北海道から名古屋のお店まで来てくれたことを、今でも覚えています。彼無しでは、ここまで幅広い対応ができるお店にはならなかったと思います。

彼は僕よりも年下ですが、人として尊敬しています。

左:北村航さん
右:佐藤我久さん

|北海道の生活を支える足元を作る、靴修理職人の存在

そんな航くん、資材を取り扱うプロの皆様、そして店舗のDIYを一緒に手伝い、オープンを支えてくれた家族。

多くの方に支えられ、2021年7月10日に「ASHIDO HOKKAIDO」を立ち上げることができました。

ただし、当時の僕は北海道でのビジネス1年生。もちろん、ソールの特性は学んできましたし、本州でも何万足もの靴を磨いてきました。それでも、北海道でお客様にご提案するのは初めてだったので、不安もありました。

しかし、「ソール交換のおかげで、おっかなびっくり歩かないようになった」(80代女性)や、「こんなお店ができることを、ずっと待っていました。ここに来るとワクワクさせられます」(30代男性)など、北海道に住む様々なお客様から、ありがたいお声をいただけるようになりました。

僕らがやったことで日々の生活を足元から支え、感動を与えることができたと、正直なお声は聞けた瞬間はホッとしますし、それと同時に大きな原動力になります。

「ASHIDO HOKKAIDO」|冬底カスタム ” 事例
(画像左:Before|画像右:After)

ワークブーツ、革靴など従来の修理のみならず、
スニーカーやダウン入りのブーツなど、
幅広い種類の “ 靴底カスタム ” が行える。

取り付ける底材は世界中から様々なものが揃えられている他、
底材ごとの違いを分かりやすく説明してもらえるので、
初めての修理でも安心して靴を預けられるのもポイント。


|地元北海道を、足元から感動させ、日々の生活を支える

地元といえども、約10年間名古屋に居たこともあり、文化の違いは勿論、本州で履かれている靴への馴染みが薄いこと、それに伴う需要も全く違うことから、開店当初は発信や集客は本当に苦労しましたし、今も手探りで試行錯誤を続けています。

しかし、その甲斐あって、この街で何が必要とされていて、どれだけ過酷な環境の中で北海道の方々が毎日を過ごしているかを再確認できました。

「ASHIDO HOKKAIDO」のラバーソール交換や靴磨きを通じて、この街に住む人々の足元に寄り添い、日々の生活を笑顔に、豊かにしていこうと思います。







前編のインタビュー内容は以上です。
今回の記事を読んで、

「ASHIDO HOKKAIDOに、靴修理や靴磨きをお願いしたい!」
「世界中のラバーソールを見て、その違いも聞いてみたい!」

という方は、下記より店舗詳細をご覧いただけます。

佐藤さんが更新している「ASHIDO HOKKAIDO 」公式HPでは、
様々な靴修理・靴磨きの事例や、各メニューごとの特長が紹介されています。
ずらっと並んだ靴の数々は、見ているだけでワクワクすること間違いなしです。

郵送での修理受付も可能とのことなので、北海道内の方はもちろん、道外の方でもご利用いただけます。

後編では、北海道で多く履かれているという “ ワークブーツ ” に関して、
ブーツが好まれる理由、道内ならではの靴クリーム選び、ケアやお手入れにまつわるお話をお届けいたします。

次回のインタビューもお楽しみに。







ASHIDO HOKKAIDO

|店舗情報
・住所北海道札幌市中央区大通西15丁目3-12 大通西ビル 1階
・営業時間 11:00-19:00(月曜定休)
・TEL:011-600-1324

|各種HP、SNS
・公式HPhttps://ashidohokkaido.business.site/
・Instagram:@ashido_hokkaido

※修理見積もり、その他お問い合わせは、公式HPよりご利用いただけます。
※最新の店舗情報に関しては、事前に公式HPをあわせてご確認ください。


鈴木理也 氏 × 佐藤我久 氏
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