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Meister interview vol.31 〜Arch Kerry 清水川 栄さん〜

革靴、皮革製品、靴磨きやファッションなどに精通しているプロフェッショナルな方々を、M.MOWBRAY認定のシューケアマイスターがインタビュー。

お仕事の内容、こだわりや人となりについてご紹介する企画です。

インタビューにご協力してくださったのは、パターンオーダーを展開する高級紳士靴ブランド『Arch Kerry』
(アーチケリー)ディレクター 株式会社SKEWORKS 代表取締役の清水川 栄さんです。

Arch Kerry|清水川 栄/シミズカワ サカエ

1982年生まれ。埼玉県大宮市出身。
大学在学中に神保町の靴専門店『ミマツ靴店』にて販売員としてアルバイトを始める。のちにバイヤーも経験。

2020年独立。アメリカンビンテージシューズの魅せる美しさを手がかりに、メンズシューズを製作する「Arch Kerry」(アーチケリー)を立ち上げる。

現在は、革靴の持つ魅力を広めるべく、全国の百貨店や路面店にて精力的にオーダーイベントを行っている。
ビンテージシューズの知識量は業界屈指。



|昔からの「凝り性」

小さいころから凝り性で、弟と一緒にミニ四駆をいじるのが大好きでした。
活発だった弟はスピードを追求して、大会に出たりしてました。
僕は見た目にこだわって、カラーリングを考えたり、肉抜きしたところにメッシュを入れたりと、
プラモデルを作るかのように楽しんでいました。
もしかすると、初めてものづくりに目覚めた瞬間だったのかもしれません。
その時の体験や経験が、今の仕事の基盤になっているように感じます。

|始まりは「ミマツ靴店」

大学在学中、友人に紹介された神保町の靴専門店『ミマツ靴店』でアルバイトを始めました。
初めは、靴に特別興味があるわけでもなかったのですが、靴好きに囲まれていた影響もあって、
どんどん革靴にのめり込んでいきましたね(笑)
当時、店頭ではアメカジブームもあって「レッドウィング」や「ダナー」などを多く展開していた
ので、自ずと「Made in USA」に惹かれていきました。

はじめは販売員として、後にバイヤーも経験しました。
毎月のように海外へ買い付けに行き、沢山の靴に囲まれる生活を送る中で、より革靴に対する関心が
深まっていきました。

|バイブル「LAST Magazine」

そんな頃に創刊された「LAST Magazine」は、私の人生のバイブルです。
それまでは、革靴にフォーカスした雑誌が少なかったので、毎日穴が開くほど読み返していました。
店舗ではアメトラブームの流れで、日本の「リーガル」、英国の「アルフレッドサージェント」や、
当時、国内流通の少なかった「クロケット&ジョーンズ」も扱うようになりました。

|人生を変えた「ビンテージシューズ」との出会い

ミマツ靴店では、インターネットで新しい商品のリサーチをする業務を担当していたのですが、
たまたまアメリカンビンテージシューズを集めている方のブログが目に留まりました。

画面越しに、1950年代のアメリカンビンテージシューズが放つ現代の既製品とは比べ物にならないほどの革表面のキメ細かさや、ステッチの繊細さ、丁寧な作りがひしひしと伝わってきました。
今まで現行品ばかりを見ていた私には、とても新鮮であり衝撃でもありました。

このことがきっかけとなり、アメリカンビンテージシューズを収集するようになりました。
今は減らしてしまいましたが、一時期は、100足程度を所有している時期もありましたね(笑)

|すべてが重なったタイミング

様々な革靴に触れてきた経験を活かし、バイヤーとしてミマツ靴店で働く傍ら、2016年に国内外の
メーカーを扱う靴通販サイトの運営会社を立ち上げました。

運営から約3年ほど経ったある日、兼ねてより構想していた自分のブランドを作りたいという想いと、
大好きなアメリカンビンテージシューズのコンセプトが自分の中で合致するタイミングが訪れました。
直ぐに15ページ程の企画書を作成し、「Arch Kerry(アーチケリー)」をスタートさせました。

初めは、商品企画の経験が全くなかったので、どこから手を付けていいかわかりませんでした。
理想としていた、ビンテージを再現するための仕様は知り合った国内大手のメーカーの方に直ぐには
受け入れてもらえず、そんなことはできないと断られることが大半でした。

失意の最中、奥浅草に腕のいい職人がいるとの噂を耳にしました。
それが「タテシューズ」の舘さんとの出会いでした。企画書を持ち込んで、思い切って製作をお願い
したところ、快くOKをいただくことができました。
舘さんと研究を繰り返しなんとか商品化にこぎつけたときの達成感は、今でも忘れられません。

全てが真っさらの状態からのスタートだったので、試行錯誤しながらのブランド立ち上げは毎日が
苦労の連続でしたね。


|「Arch Kerry」とは

アーチケリーはアメリカンビンテージシューズの魅せる美しさを手がかりに、メンズシューズを製作
するブランドです。

現在は、パターンオーダーで製作できるMTOに加え、RTWコレクションを展開しています。 

MTOはパターンオーダーを基本として承りますが、さまざまなオプションをご用意しているので、
他にはない一足を作ることが可能です。
シームレスヒールにしたり、ステッチラインを変更したりと自由なオーダーが楽しめます。
基本的な仕様として、つま先のライニングに布を使用したり随所にビンテージ特有の意匠を施しているのですが、靴の知識や技術力が無いと再現が難しいので、確かな技術を持つタテシューズさんに製作を依頼しています。

人気のデザインは、アメリカンビンテージシューズを象徴するようなUウイングです。
今はあまり見かけなくなりましたが、カーフとスエードなどコンビ使いが映える秀逸なデザインです。

紐なしの、ナイロンメッシュを使用したレイジーマンも用意しています。
メッシュの質感はよりビンテージの意匠に近づける為、とくにこだわりました。
繊維街を走り回って、何日もかけて納得のいく生地を入手することができたのは、良い思い出です(笑)

このようなメッシュコンビの靴は、今はアーチケリーでしか、オーダーできないと思います。

MTOコレクション
ナイロンメッシュのレイジーマン(中央)


米ホーウィン社のコードバンでのオーダーも可能
ダークコニャック(左)が一番人気とのこと


RTWコレクションはMTOのパターンのなかから代表的なものを既製品として展開しています。
キャップトゥ、Vチップ、ホールカット、タッセルローファーの4デザインのラインナップです。
MTOと同じカーフを用いており、アーチケリーの魅力を損なうことなく価格を抑えています。

RTWは、製品クオリティの高さで知られる秋田県にある宮崎製靴さんが生産しています。
アメリカ靴の木型を基に、日本人向けにアレンジを加えているのでかかとが小ぶりで
歩きやすさも重視されています。
以前、他のブランドの靴を探しに来た方が、数ある靴の中で「今まで履いた中で一番履きやすい!」
とほめてくださったことがありました。
ご購入いただけたことでブランドとして認められた気がしてとても誇らしかったです。

RTWコレクション
コバの目付など細部まで丁寧に作られている



|こだわりの「ブランドロゴ」

ブランドを始めた当初は、ブランドロゴが存在しませんでした。
模索している中で、インスタグラムのやりとりがきっかけで、ファッションイラストレーターの
「綿谷寛」さんに作成を依頼することができました。
もちろんコネがあるわけでもなく、ダメもとでDMをお送りしたところ、先述の企画書を見てもらう
ことができました。
実際に、帝国ホテルのバーで会うことになりましたが、初めはとにかく緊張して、たどたどしく
お話ししたのを覚えています。(苦笑)

今では、展示会に足を運んでくださるなど、大変良くしていただいています。
その時にご厚意で書いて頂いた似顔絵は、お守り代わりにイベントで飾るようにしています。

当初6案ほどあった中から選ばれたロゴ
ヴィンテージ靴と並べても溶け込む違和感の無いデザイン


|思い入れのある一足

「Arch Kerry」を舘さんと作りはじめて一番最初に完成した、プロトタイプと呼んでいた靴です。
こちらを、ブランドデビュー前から開設していたインスタグラムのアカウントに掲載したところ、
予想以上の反響がありました。
2020年7月の最初のオーダー会で履きおろし、その後もイベントの際には、欠かさず履いています。

お手入れに関しては、革の本来のしわや光沢感を愉しみたいので、余計なことはせず無色の乳化性の
クリームで磨くことがほとんどです。
今までワックスをほとんど使用する機会が無かったので、今後どんな表情になるか試してみたいと思っています。

ヒールはオールレザーにVクリートを装着し、ソールの踏まず部分には、1/4サイズの半カラスを施したビンテージの意匠たっぷりの仕上げです。履きすぎてしまい、トップリフトは交換しなくてはならない状況です(笑)
ゆくゆくは、アーチケリーオリジナルのラバートップリフトに取り替えようと思っています。
グリップ性が高く、安定感のある歩きやすさも自慢なんです。(インタビュー後、FANS.エキュートエディション新橋にて、ラバートップリフトに交換しました。)

清水川氏 私物


|今後のブランドの展望

最近に始まったことではないですが、スニーカーに押され革靴の市場は縮小を続けているように
感じます。そんな状況下でも、革靴の良さを伝えられるブランドでありたいと思っています。
革靴を全然知らない人がアーチケリーをひと目見て、「革靴ってかっこいい」、「魅力的だな」
と感じていただけるようなプロダクトを作り続けることが今現在の目標です。

ビンテージに限らず、今後もアメリカ靴の魅力を紐解いて再現していきたい想いもあります。
デザインバリエーションとして、ロングウイングチップやモカシンローファーなどを増やしていきたいですね。

また、RTWコレクションを始めたことにより、色々なお店さんが興味を持っていただく機会も増えました。
今後はそういった方達と、アイデアを共有して別注品を作ってみたりするのも面白そうですね。
アメリカの靴と言っても、紐解いてみると、元々ヨーロッパから移った靴職人が始めたブランドが多いようです。
お固い印象がありますが、実は多彩で、自由なんです。
アメリカへの進出も考えていますので、常識の枠にとらわれず、どんどんチャレンジしていきたいです。



インタビュー内容は以上です。

今回の記事を読んで、

「アーチケリーを実際に見てみたい」
「革の質感や靴の雰囲気を体感したい」

という方は「FANS.エキュートエディション新橋」にて行われるポップアップイベントに、ぜひ足を運んでみて下さい。

【期間】2023年1月27日(金)~2月9日(木)まで
※清水川氏 来店日 2月4日(土)、2月5日(日)

清水川氏の魅せるアメリカンビンテージの世界を是非ご体感ください。


次回のインタビューもお楽しみに。



Arch Kerry

|文京区春日オフィス
・〒112-0003 文京区春日2-26-11 andozaka COIN
※公式HP内、コンタクトフォームからアポイントをお願いいたします。

|各種HP、SNS
・公式HP:https://archkerry.com/
・Instagram:@archkerry



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