【REDWING9078】ヒールを高くするカスタム【コングレスブーツ】
FANS.浅草本店のYUMA.です。
仕事中はブーツ、夏であってもそれは変わりません。
でもさすがにこの暑さに負けて6インチハイトのペアがメインになってきました。
11インチのエンジニアや8インチのハンティングは体調と空調が整ってるときに履くことにします。
ところで最近ウール80%の薄手ソックスを試したらブーツ内環境がいくぶん快適になりました。
ウールは吸湿性があるため汗をかいてもサラリとした肌触りとなるそうですが、身をもって納得しました。
ただし気になるのは耐久性。
エンジニアを履いているとどうしても多少カカトが動くので擦れてすこし薄くなってきました。
遊びの大きいプルオンブーツは避けた方がいいかも?
昔のカートゥンアニメや漫画やらで穴の開いた靴下を繕って直したものが登場してましたが、ようやくその気持ちがわかりました。
ウールの靴下は安価な靴下の5倍くらい高いので、ちょこっと穴ぽこがあいたくらいでおいそれと捨てられません。
「靴下なんて、わざわざ直すもんでもない」
とこれまで思っていたのは、根っから「大量生産、大量消費」の価値観が染みついていたからだったようです。昨今は環境への配慮が世界的な指針となっていますが、「捨てたくない気持ち」をかき立てるようなプロダクトを作ることも根本的な解決に繋がるのかもしれませんね。
というわけで、これからは靴下に穴が空いてしまっても繕いながら、靴と共に長く履こうと思います。
さて、本日紹介するのはREDWINGのサイドゴアブーツ「#9078」(通称:コングレスブーツ)の修理事例です。
ゴアゴムで足をホールドする「プルオンタイプ」で、すっきりとした見た目と着脱のしやすさで人気です。
コングレス=議会、という名があらわす通り19世紀~20世紀初頭にかけてフォーマルな場でも活躍したブーツです。現代でこそフォーマル=短靴のイメージがありますがおよそ100年前のアメリカでは舗装道路もまだ整っておらず、泥や土埃を避けるためブーツ丈の履き物が一般的でした。
そんな在りし日の紳士の足元を想起させるモデルとしてリリースされたのが「9078」なのです。
木型にはREDWINGの中ではややノーズが長い「Mil-1」を使用することで、よりスマートな佇まいに。ルーツとリンクしたスタイリングが可能です。
靴についての解説が長くなってしまいましたが、今回おこなったカスタム内容は「ヒールハイトアップ」です。
ヒールハイトアップとは、踵の積み革を増やしヒールの高さ(ハイト)を上げるカスタムのことを言います。
「メンズがヒールを高くしてどーするの?」と思われるかもしれませんが、19世紀末において、現代よりも高いヒールを積むのが男女ともに流行していました。(1910年代には実用性が重視され徐々にメンズのヒールが低くなっていった)
さらにそれ以前、例えば18世紀の宮廷ファッションにおいてはもっとヒールが高く、優雅さと権威の象徴としてハイヒールが発展していった歴史があります。
今でこそ珍しく感じますが、男性ファッションとしてそこそこ高いヒールというのは過去を振り返れば稀有なものではありません。
・積み革5段のヒールベース(ヒールの基部)
+
・22㎜厚のブロックヒール
により、この高さのヒールを作っています。
今回は「積み革+ブロックヒール」の価格でのご案内ですが、今後はブロックヒールのみでの交換修理が可能です。REDWINGは木型に対するヒールハイトが低い傾向にあり、多少ヒールハイトを高くしても履き心地への影響がすくないのもポイントのひとつです。
(純正はブロックヒール単体の仕様)
しかし、今回は元の状態の倍近い高さまでヒールハイトをアップしています。
このままでは、さすがに前傾荷重がかかり、靴全体のバランスが悪くなってしまいます。
そこでご提案した解決法が「セパレート用ハーフラバー」の併用です。
(画像1:一般的な薄型ハーフラバー)
(画像2・3:セパレート用ハーフラバー)
通常のハーフラバーは約2㎜厚の非常に薄いタイプ(画像1枚目)を使い、目立たないように仕上げます。
しかし「セパレート用ハーフラバー(画像2,3枚目)」は約6.5㎜厚もあるため、フォアパート(靴の前半分、ふみつけ部分とも呼びます)の高さが増します。結果ヒール側とフォアパート側の高低差が少なくなり、前傾だったポジションが戻り楽になるのです。
今回のご依頼者は長身の方で
「太いパンツと合わせると靴が負けちゃうからもっとボリュームを出したい」
ということでヒールハイトアップをご注文いただきましたが、副次的に身長も盛れます。単純にヒールが高くなるだけでなく、自然と背筋が伸びるポジションになるので立ち姿がスラっと見えることこそ、見た目の印象を変えてくれる要因ではないかと個人的には感じます。
靴のフィッティング状況や構造によっては不向きな場合もございます。
同様のカスタムをご希望の方は、店頭にてお気軽にご相談ください。
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