後編:コルク×くるみ⁉荒井のインスピレーションが産んだ新素材ソール
FANS.浅草本店YUMA.です。
前回、荒井さんがクルミを使った新素材ラバーを開発したとお話ししましたが、
その内容をまったく紹介しないまま終了してしまいました。
反省を踏まえ今回はスピーディーに行きます!
まずは、なによりモノをご覧ください。これがくるみを使った新素材。
まあこれは前回にもチラッとお見せしています。
なんの変哲もないゴムのように見えますが表面をグラインダーで剥いてみると……
茶色い粒粒が出てきました。
そう、これがクルミ(とコルク)のチップなのです。
「んでコレのなにが良いの?」と声が上がりそうですが、
これから解説していきます。
そもそも、靴底に使われるゴムにはいろいろな種類があります。
耐久性に優れるニトリル系ゴムが主流ですが、伸縮性と弾性に富むラテックス系(天然ゴム)もその柔らかい履き心地から根強いファンがいます。
今回のベース配合もラテックス系ゴム。独特の弾力感が魅力ですが、緻密な加工には向かないため排水用のスリットを設けることができません。
そのため濡れた路面では滑ってしまうデメリットがあります。
そのデメリットを解消すべくラバーに練り込まれたのがコルクです。(コルクソールは昔からあります。というかハイテクラバーが登場する以前から存在するので、いわばローテクラバーとも言えるのかな?)
ラバーの中にコルク片を練り込むことでラバー表面に凸凹の空間が生まれます。その空間によって路面との摩擦力を確保しようという狙いです。
ラバーに直接練りこむことにより、ソール表面が摩耗しても、次々と新しいコルク片が露出するので靴にピッタリの構造のように思えます。
だがしかし。
実際はコルクだと耐荷重強度が弱く、すぐに表面が潰れたり脱落してしまったりするそうで正直言って性能はイマイチ。
だからこそニトリル系ゴムに覇権を譲る形になったのもうなずける話。
「ラテックス系にもいいとこあるのは認めるけど、濡れた路面でのグリップは諦めろ。予備校生は絶対履くな。」
そんな、割り切った大人たちの声が聞こえてくるかのようです。
しかしただひとり諦めない男が浅草の花川戸にいた!
そう、我らが荒井さんである。
かつて山形で培った雪道歩行メソッドを活用しコルクに加え、くるみの殻チップをラバーに練り込むことを
思いついたそうです。
くるみの殻のモース硬度は3.5。
氷のモース硬度は1.0~2.5ほど。
硬いくるみの殻が食いつけばグリップも向上するのではないか。
タイヤからソールへの応用を試みたのであります。
試作段階では、
バックラッシュのデザイナー片山氏から
「これじゃ滑ってダメだよー」という厳しいチェックも入りつつ、
くるみ片の粒をより細かく粉砕することでグリップ力を向上。
めでたく片山氏からもお墨付きを頂いたようです。
そんな新素材をFANS.で見せてもらって
「へぇ~、なんて名前にしたんですか?」とたずねたら
「……コルクルソール。(にやり)」
笑いながら一言放った荒井さんの顔が印象的でした。
一瞬悩んだけど
「まんまですね」
ときっちりツッコんでおきました。
ニトリル系は存在する言葉ですが、コルクル系は荒井ワードですのでご注意を。
最後にH.Araiソールでの修理事例をば。
元はクレープ(ラテックス系)ソールにTOEレザーの仕様です。
今回コルクルソールとTOEレザーでリペアしています。
(※コルクルソールはH.Araiのみの限定素材となります。在庫状況に変動がございますのでお時間の余裕をもってご依頼くださるとありがたいです)
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