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Pick Up Interview 彩革の匠 安富 好雄さん 2/2

レオ(以下:レ):せっかくなので実際の作業についての話を聞きたいのですが、いいですか?

安富さん:いいよいいよ。まずは、「何かできないかな」といつも考える。分からないときは試行錯誤して、いろいろやりながら成功まで持っていく。その過程で革がどうなっているのかなんてのが本当によく分かるんだよ。「最後にきれいになればいい」って言うのは直す仕事のいいところだよね。

レ:あ、そうか。確かにゴールにたどり着ければ仕事としてはOKですよね

 

 

安富さん:そうそう。だから作業中に色々なことをやるなかで、どうなっているのかが勉強できるの。最近だと、特殊な仕上げの革も色々増えてきて、その中でグラデーションのメタリック素材の物があって。それはよく見るとうすーくビニールが貼ってあってそれでコーティングしているみたいで。そのビニールにグラデーション状に色が入ってて、それがメタリック素材にグラデーションを与えていると。
想像つかないでしょ、ぱっとグラデーションのメタリックってどうやって作るのか。でもそれがこうやって観察してみるとよく分かる。
これの場合はフィルムだから、それが浮いていてそれを直せるかどうかが鍵になっていて、そこを何かできないかなと考える。試しに透明の液体に薄く染料をまぜて、うまく風合いと色が揃うようにスプレーで入れてみたらうまく行ったよ。

レ:色々と試す中で正解が見えてきて、って感じなんですね。どうなっているのかをそこで見ていくというか。

安富さん:メタリックもガラスもやってはいるんだけど、ピカッとさせるのは難しい。
金箔を貼り付けたような感じって言えばいいのかな。濡れたような質感のツヤっていうのは出すのがとても難しい。

レ:そもそも、メタリックはどうやって色を付けているのですか?

安富さん:メタリックは直すのに粉を使うから。これを透明の液体に解くんだけど、パールは貝で金は真鍮。銀はアルミで、銅は銅をそれぞれ粉にしたものを使っていて、粉の粒だからピカッと光らない。粉は結局、点で面じゃないから。

レ:ああ、そういうことですね。均一な面にはならないから光の反射の仕方が違いますよね。

 

 

安富さん:そうそう。他に、例えばエナメルは色移りで持ってこられることが多いけど、この場合は元の色と同じ色を塗って透明を上に塗る。部分的な仕上がりはきれいなんだけど、スプレーは色の粒が革に着くから、中心はきれいなんだけど中心から離れると粒同士の間隔が広がって、離れてくると曇るんだよね。だからやるときは直す部分だけでなくてパーツ全体できれいにしちゃう。部分でやるのは今話したとおりで境目が曇るというか粒の間隔の問題で難しいね。
パーツ全体でやっても元の状態よりは流石にいくらかは曇るけど、じゃあそれが気になるかって言うと「シミがあって恥ずかしくて履けない」なんて人は全然気にならない。

レ:気になっているところが直れば「また履こう」ってなりますもんね。

 

 

安富さん:まぁでも、修理で完璧っていうのは難しいね。でも満足してもらえるかどうかは常に気にしているよ。お客様が喜ぶかどうかっていうのは一番においていて、だから奥が深いんだけど、工夫したり色々経験したりで、そこだよね。色なんかもやっぱり、実際に作って「ぴったりだな」なんて思っても現物に吹きかけてみないとわからない。革はやっぱり一つ一つ微妙に違うんだなってのがよくわかるよ。製品ごとに違うのもそうだけど部分ごとにも違くて、だから部分染めみたいなのはやっぱり難しいんだよね。

少し私の話をしますが、私は印刷媒体をメインにデザイナーとして働いていたことがありました。そのときにも色に関してはかなり厳しく言われたのを思い出しました。写真の肌の色とか、紙とか印刷所によって色の出方が違うこともあったりして。
そういう点でも、安富さんが革に対してどうアプローチしているのかはとても興味深く聞けましたし、とくにこの後半の「スプレーの粒が吹きかけた中心から離れると間隔が空いて、それで曇る」なんていうのは、実際に作業をされている方ならではの意見で面白かったです。
普段、こういったことを知る機会もなかなかないと思いますので、楽しく読んでいただければ幸いです。

というわけで今回のインタビューはここでおしまい。次回の方も、きっと面白い話が聞けると思いますので更新をお楽しみに☆



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